STEMdiff Intestinal Organoid Kit(ST-05140)で作製した腸オルガノイドのマーカー発現が、継代3回ほど過ぎると低下してしまいます。細胞維持はオルガノイドの状態でおこなっています。オルガノイドの品質維持におけるコツなどはありますか?

更新日:2022年12月22日 印刷する
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腸オルガノイドの継代が進むと(P3以降)、形態は変化して出芽はなくなり、嚢胞性となって内腔は顕微鏡観察の際に暗く見えるようになってゆきます。また、下流の解析を行う場合には最低3回の継代を経ておこなうことをお勧めします。その理由は、オルガノイドをより安定に樹立するために初期の継代(P0-P1の後期)の段階で多く見られる間葉系細胞を排除するためです。

また、もしも継代後にオルガノイドが回復してこない、またはオルガノイドの成長が遅い場合には、継代でピペッティングにより物理的に細胞塊を崩す際に、より大きな細胞塊を作るようにする(最適なサイズは100 – 500 um)、または、より多数の細胞塊を播種することをお勧めします。

また、分化する細胞が少ない場合には2週間程度継代をしないでおくことをお勧めします。その間は3-4日ごとに0.5 mLの新しいSTEMdiff Intestinal OGM(ST-05140)で全量培地交換をおこなってください。オルガノイド培養を延長することにより、分化した細胞をエンリッチすることができます。

継代比率に関しましては、理論的には1つの細胞塊(sphere)が1つのオルガノイドへと成長します。
しかしながら実際には、P0の段階で50%程度のオルガノイド形成率となっております。
P1においては、理論的には一個の組織断片が1個のオルガノイドへと成長するはずですが、 組織断片のサイズ(メーカーでは100 – 500 umを推奨しています)、そこに含まれる幹細胞の数などによってこれは変動します。
またメーカーでは、培養7-10目に1ドームあたり40-80個のオルガノイドを得るために、継代比率を1:2でおこなっております。
オルガノイドは、数が多すぎるよりも少なすぎる方がオルガノイドにとって悪い影響があると考えられます。
その理由としては、パラクラインのシグナリングが得られにくくなりオルガノイドの増殖がしにくくなるためです。
なお、もしも1ドームあたり40-80個以上のオルガノイドを得たい場合には2日ごとに培地交換が必要です。

ご参考:継代比率とオルガノイドの形態の関係につきまして、下記資料のFigure 3(17ページ目(表示は13ページとなっております))もご参照ください。
Generation of Human Intestinal Organoids using STEMdiff Intestinal Organoid Kit